7.7.09

氷河地形系ナショナルパーク行脚 その6

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5/29-6/14のイエローストーンNPおよびアラスカ旅行を振り返る。
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▼6/9 Tue 歩いて氷河を見る2

今回の旅行では,イエローストーンNPやグランドティトンNPで慣れないキャビンに泊まったり,トレイルを歩いたり,アラスカに来てからは登山スティックまで買って急峻な(でも短い)丘を駆け上がってみたりしたが,これらはすべてこの日のための練習であった。

アンカレジの南に延びるキナイ半島はその半分がキナイ・フィヨルドNPとなっているが,公園内にアクセスする手段が少ない。カヌーに乗って海から回るか,あるいは,このスワードの近辺に伸びるエグジット氷河の脇を登山するかだ。そして,この約15kmのハイキングをしてきた。

エグジット氷河は山間部の氷河で海ではなく地表に川となって流れ出ている。大昔は海に面していたかもしれないが,約50年前の発見時に比べ現在は数キロの単位で後退しており,原因は温暖化と言われている。氷河は雪が降り積もり,押し固まってできた氷の流れだ。そのため,落葉樹の森林が生い茂るその脇に氷河があるという光景も珍しくない。氷のそばで温帯のような暖かさを感じることができるのだ。



さて,このエグジット氷河の登山道は,地表が見える地点までは地元の高校生が整備しているらしい。傾斜のきつい山肌をくねくねとトレイルが敷いてあり,ときに岩が階段状に組んであったり,トレイルの脇に養生中のため踏み込まないようにとのサインがあったりと,手が入っているなぁと思いながら登っていくことになる。

木の背の高さがだんだん低くなり,果てには地表を這うような草もまばらになると,目の前に広がるのは雪に覆われた斜面だ。ここまで単純に登ってくるだけでも疲れたのに,これから先は雪に足を取られる。このとき,スティックがあって助かったと心から思った。登山客は少なくないようで,トレイルを示す小さな旗から旗を巡って雪上には多くの足跡がついていたが,それに従っても時々溶けた雪にはまりこむことがある。加えて致命的だったのはサングラスを持って行かなかったこと。どうしても雪をじっと見つめて歩き続けなくてはならず,しかもこの日は雲がほとんどない快晴で,反射する光の目への刺激がひどかった。

それでも4時間かけて頂上に到着。山頂から果てなく続く峰には雪が降り積もり一面の雪原だった。かろうじて雪が溶けて岩肌が見えている場所に腰を下ろして休憩。雪は音を吸い込むというけれど,本当に何も音がしない世界だった。足下には氷河が山肌を滑り始めるであろう場所があり,視線を遠くにやれば空との境まで雪が続く。照りつける陽光は痛いほどであるのに,肌をすべる風は冷たい。すべてがあってなにもない世界だと思った。

帰り道,すれ違ったレンジャーから登山道の途中に熊が出たと聞かされた。どうやら他の登山客に注意を喚起しに行くらしい。念のためにつけた熊よけの鈴が役に立ったのか,私たちは一度も野生動物に遭わずに無事下山できた。

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