21.6.18

タコの季節

店先に生の蛸が並んでいる。

生の蛸と言えば、鮨にしてぽん酢をかけたり、カルパッチョにしたり、ということくらいしか想像できなかった。
蛸にはもともと塩気があるし、嚙み切れる程度の歯ごたえもよい。それほど手をかけることもない。

蛸はトマトと煮込むと化ける。
オリーブオイルとニンニクを大目に垂らして、蛸とフレッシュトマトを重ねて煮込んでいく。アヒージョのイメージである。
トマトから大量の水が出るので、しばらく熱し続けて飛ばし、赤い油が分離してチリチリ音を立てたら完成だ。
しかし、蛸は煮込みすぎると生臭くなる。生のトマトは別の鍋で半分ほど水分を飛ばしてから投入した方がよかったな。
あるいは、缶のトマトの方が適しているかもしれない。

数年前からBSプレミアムで「世界入りにくい居酒屋」という番組が流れている。
タイトル通り、世界の地元民ご愛用、日本人は旅行者として現地に行ったら入りにくいだろうという居酒屋を紹介する内容だ。
そこで、ポルトガルのポルトが取り上げられた。

地中海沿岸では蛸はよく食べられるようだ。蛸は悪魔の使いなどと忌避する文化を先に知っていたので、一瞬、意外だなと思った。
しかし、海が近く、漁業が主要産業の地なら、捕りやすい魚介は食糧として定着するだろう。
居酒屋よりもむしろお酒も飲める飯屋といった趣のある、主人夫婦が営む小さな店では、女主人がかまぼこ板を3枚ほど重ねた大きさに切り出した蛸の足をフリッターにして、トマト煮込みをかけていた。

合わせるのは、初夏ということもあり、甘く濃厚なポルトワインではなく、グリーンワインだ。瓶内発酵の微発泡白ワインはグラスに注いで陽にかざすと、かすかにグリーンがかって見える。
朝晩は少し涼しく、日中も日差しこそ暑いが日陰を渡る風は爽やかなこの時期にふさわしいワインだと思う。
うちの近所で取り扱う酒屋があるのでまた飲みたいものだなあ。

そして今日は夏至だった。
Happy solstice!