14.5.20

ようやく生活が軌道に乗ってきた

新天地に来ましてはや一月半。やっと新しい家の中での動きに体が慣れてきた感がある。
引っ越しの面倒なところは,布団の上げ下げとか,洗った皿の片付けのときにどの方向に振り向くかとか,意識しないで行ってきたことがことごとくリセットされることにある。ふだん頭を使ってこなかったところにリソースを振り分けるのは疲れる。なので,ある意味現状の自粛生活は僥倖でもあった。子供の学校対応とか,新しい町で店や子供の遊び場を探すとか,いっきに降ってくるタスクをぎりぎりまで削ることができる。そうして余った時間はただひたすら自分を慰めることに回せていた。

特に四月に入って,世界中でさまざまな無料配信が行われた。普段だったら見られないようなバレエや歌舞伎,ミュージカル,演劇など,ありがたく視聴していたな。覚えている限りで振り返ってみる。

Metamorphosis; ロイヤルバレエの公演。原作は未読だが,朝起きたら毒虫になっていたということだけは知っていた。バレエの公演は過去にコッペリアしか見たことがなかったので,音楽も群舞もないこの映像には度肝を抜かれたね。人間の身体の可能性と,普段見慣れないだけで同じ人間の動きなのにこんなにもおぞましくなるものかという驚き。とても興味深く見た。

・スーパー歌舞伎 オグリ; 無観客公演の特別配信だった。スーパー歌舞伎なので歌舞伎とは違うものだろうと見当をつけていたが,たとえば殺陣の立ち回りの合間に演者がそろって観客のほうを向いて見得を切ったり,花道を跳躍をつけてはけていったりといった独特な動きはおそらく歌舞伎の特徴なのだろうと思った。録音も録画も撮影もない時代の演芸なのだ。現代なら大判ポスターにするような画角の絵面は,その瞬間にしか生まれないものであって,居合わせた観客の脳裏に深く刻み付けられるように魅力を最大化していたはずだろう。

・通し狂言 義経千本桜; 歌舞伎も見ておこうと思ったのだが,これは予習が必要だ! とネットでいろいろ検索しながら見た。歌舞伎役者の注目するべきポイントの一つは声だという。しかしやはり伝統芸能だけあって現代の普通の発話はしない。耳が慣れるまでちょっと苦労した。Aプロはなんとか見た。話のあらすじをすでにわかっていて,今回はこの役者さんでどんなふうにお芝居するのかな,という楽しみ方をするものだと思ったな。

・ジーザス・クライスト・スーパースター
・オペラ座の怪人
・Love never dies
アンドルー・ロイド・ウェバーのミュージカル特別配信で,4月は毎週末48時間限定だったので必死に追いかけた。JCSはかつてイギリス留学していた時,ブライトンフェスティバルの催しにあったんだけどチケットがとれずに見送ったのよね。なので20年越しに見られた。オペラ座の怪人は映画も見てなかったのでこれが初見。オペラの続編のラブネバーダイズももちろん。ミュージカルは歌があるので,字幕さえあればまあなんとかわかる。音楽がめちゃくちゃかっこよかった。JCSはロックミュージカル,オペラはオケの中にバンドがいたね。ギターと相まって荘厳だったな。舞台芸術も衣装も素敵だった。面白かった。

・ミュージカル刀剣乱舞 一挙配信
で,ミュージカルを見たので調子に乗って,4/23から十日間,毎晩8時からの配信を追っかけました。刀剣乱舞はゲームはしている。2019年1月公開の映画刀剣乱舞がきっかけだったので,お芝居をしているのは知っていた。さらには2018年の紅白にもミュージカル部隊は出演していたし,その前にBSのほうで特集を組んでいたのも見ている。なので出会うべくして出会ったという感じ。
10本中,お芝居があるのは6作,残りはコンサート。一気に見たのもよかったのかもしれない。とても楽しかったし夢中になった。役者はどんどんうまくなり,楽曲のバラエティも増し,増えるキャストもアイドル風から明らかに歌唱力を期待されている人,アクション,舞踊などスキルが増していく。衣装や舞台セットが豪華になっていくのにも,収益が増した分が回されたのかななんて思いをはせることができる。各作の千秋楽を配信しているので新作予告も併せて流されるのだが,会場が増えるたびにしみじみとしたものだ。
あまりによかったのでDMM動画でコンサートのDL販売に手を出してしまった。一年間見放題なのありがたい。よく見返してる。なお,Apple Musicではアルバムの配信もされているので聴き放題でもある。音楽配信は流して利益を還元したいものだ。

・NTL フランケンシュタイン; ベネディクト・カンバーバッチがクリーチャー役をやった回を見た。
これは演劇なので歌がない。当たり前のことだけど,歌があるとセリフが少ないし,歌で感情は読めるので,言語がなくても内容はわかるのだ。不安があったけれど,そもそも半分くらいは言葉がほぼない話だったので助かった。
人間によってつくられた「いのち」がどのように育っていくのかは,最近気になるトピックでもあるので興味深く見た。字幕があればなんとかなるレベル。映画のフランケンシュタインとはたぶん異なる結末だったと思う。こっちはフランケンシュタインを親と慕うクリーチャーのプリミティブな感情,愛情を欲する態度が切なかった。

・ストラトフォード・フェスティバル リア王; これは開始10分で無理だと悟った。初めてのシェイクスピア。リア王は話も知らない(教養がない)。セリフが長いんだね。一文のピリオドがこない。早口。字幕についていけない。
フランケンシュタインは字幕を見なくても耳だけでも,ああこれは古英語っぽく言ってるのね…とか余裕ぶちかましていたのに,本家はほんと難しい。あっこれは今日までだった。もう無理。シェイクスピアはまずきちんと読みたいな…。


こんなとこかな。たぶん。とにかく刀剣乱舞は素晴らしいコンテンツだと思った。去年福岡市博の侍展も行ったからね。最近の新人がらみで古今和歌集を勉強せねばいかん…となっている。日本史も日本の古典も全然興味なくきちゃったから,昔の自分を叱りつけたい。

これからの配信では

・白石加代子の「百物語」シリーズ「筒井康隆作『五郎八航空』」
NYパブリックシアター「What Do We Need to Talk About?」
・NTL Barber Shop Chronicles

が気になっているが,三つ目のNTLは撃沈しそう。二つ目もちょっと危うい。

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