3.3.19

おまじない

ようやく読めた。西加奈子の「おまじない」。図書館のウェイティングリスト143位が1位になるまで一年くらいかかったぞ。もう買ったほうが早いんだけど、まあねえ。図書館を無料貸本屋と取り違えてる。ごめんね。

PR誌に掲載された短編連載をまとめた一冊で、どれも女性を主人公にしている。年は子供から大人までいろいろ。掲題作「おまじない」はストレートに、他の作品はその程度に差はあれど、どれも”おまじない”に導かれ、あるいは縛られている様子が綴られる。
言葉や考えがわたしの生き方に自ずと限界を作る場合がある。それは目標だったり、過去に諦めたなにかだったりしたのだろう。けど、頭の中でこねくり回して、年月がすぎて、変質したものであっても、もう一度見直してみればまた違った形でわたしを照らすかもしれない。そしたら別の世界が眼前に広がっているかもしれない。し、そうでないかもしれない。なぜならその世界がどうあるのか、どう見えるのかはわたし次第だからだ。
世界の見え方はいつも一通りではないこと、自分次第で変わることを、どの話もささやかに見せてくれる。

ということはこう、読んでるとぼんやりとわかる。上の部分はほぼ指先だけで書いた。それくらい適当な感想。

この本ね、全然違うところでめっちゃえぐってきた。
この人の、語彙、文章の長短から表れるリズム感、ここで改行入れるんだ入れるよね! 的な文章の流れ、内容では小さな発見を必ず仕込んでくるところ、おおよその登場人物にきちんと歴史があること、もう全部が全部、私の理想のはるかその先だった。この文章の海に落ちたら、私なんかもう溶けてばらばらになってなくなる。だってここに全部あるんだもん。すごい羨ましいし、悔しい。

この前に読んだのは2010年発刊の「炎上する君」だった。このときは登場人物の心情へがつがつ踏み込んでいく感じだったんだけど、今回は作者はより控えめに登場人物を眺めているように思えた。前のは馴染みないこともあってとても新鮮だった。でも今回の方が親しみを感じる。そりゃそうだ、ベクトルが近いんだもの。

ということばかりがちらちらと頭によぎって、内容は上っ面にしか読めなかった。その上で、正直、展開が急だなと思うこともあったし、前に読んだのに比べてその心情の因果関係甘くない? と思うこともあった。
でもその飛躍感も含めてすごい「わかる」。
書かれている物語すら通り越して、作者のなにか魂みたいなのに手を伸ばしながら読んでいたような気がする。
とても悔しい。私はとてもこんなのは書けない。書きたい。書けない。でも書きたい。
 
上滑りにしか読んでないけど、悔しすぎて読み返すことができない。
貸出票には、私の後ろに予約がついてるよとご丁寧にも注意書きがついている。はやいとこ返却しに行こう。 でもきっとこの感情はしばらくおさまらないだろうな。

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