26.2.19

映画いろいろ2

2018年の終わり頃は韓国映画づいていた。韓国映画はとてもよいんだけど、人名が覚えきれなくていつも困ってる。幸い、顔が判別しやすいのでまだ今のところは大丈夫だけども。
  1. 1987、ある闘いの真実
  2. タクシー運転手 約束は海を越えて
  3. 名もなき野良犬の輪舞
  4. jam
  5. 映画 刀剣乱舞
  6. ナチス第三の男

韓国の現代史などもうほぼ全部忘れている。でも「1987、ある闘いの真実」はこの年代の社会の様子を登場人物のセリフでも説明してくれるので助かった。
この年、韓国は盧武鉉が民主化を宣言した。でもそうなると反動が起こるので、特に北朝鮮の工作も激化していたんだろうな。大韓航空機爆破事件が起きている。同年、ゴルバチョフとレーガンがINF全廃条約を締結しているけども、朝鮮半島は変わらずきな臭いままだったんだろう。
映画は同年明けてすぐの頃、全斗煥(軍事クーデターで大統領になった人)に対して民主化運動の機運が高まっていた頃の話。韓国の情報部や私服軍人が、潜んでいる共産党員を端からひっ捕まえて拷問などにかけ、とにかく「アカ」を駆逐するのに必死。そこに大学生を中心にした民主化運動が混ざってくるのでもう大変。その中で、とある大学生が拷問の末死亡した。情報部は秘匿しようとしたけれども、とある検察官がそれを阻んでいく。
でもこの構図は前半までで、後半はその隠された真実を、善意の細い糸をたどって世間に公表される、というところまで展開する。
硬い話かと思えばそうでもない。情報部司令官と検察官が路地裏で直接対峙するところなんて現実にはまずありえないファンタジーだけど、すごくかっこいい場面だった。思わず検察官の役者を確認してしまった。
とにかく登場人物が多いこと、要素がたくさんあること、当時の映像をそのまま使っているのと、それを現代のVFXを駆使して再現している本物のような画面。映画ってこういうの! と見せつけられている感じ。韓国映画の熱量はものすごい。踏ん張ってないと倒れる。


で、この映画の前日譚を描いたのが「タクシー運転手 約束は海を越えて」 、光州事件の話。大学生を中心とする民主化運動が起きたので、全斗煥政権は村を完全封鎖して住民を浄化しようとしていた。その噂を聞きつけたとある外国員特派員が現地に潜り込みたいとやってきたのを、ソウルで適当に暮らしているタクシー運転手の主人公が提示された金額に目がくらんで事情も知らずに請け負う。
この映画、冒頭はものすごーくお気楽な人情ものみたいな入り方をしている。中盤からどかんと落としてくるんだけど、そのギャップ! ひどい! 2018年冒頭詐欺映画大賞を差し上げたい。
このタクシー運転手が情けない男で、酒浸りになって妻に逃げられ、幼い一人娘がいるんだけど満足に育ててあげられてない。愛情はあるけどカネがない。タクシー運転手の稼ぎではまだまだ…という感じ。これが光州に入ってあれよあれよと巻き込まれて、だんだん父親、というか一人の大人の男性、に変わっていくのがいい。
こちらは過去の映像は使っていないものの、シリアスな画面は照度をぐっと落としていて思わず眼を閉じてしまうほどの恐ろしさがあった。
この映画はいっちばん最後にそれ持ってくるの!? というエピソードがあって、泣いた。ほんと落差がひどい映画だった。ひどすぎて最高。


上述の二作とは全然毛色の違う、韓国の任侠もの、ノワール映画。フラッシュバックでヒントを散りばめながら構成されていて集中力が必要な映画ではあるけど、そういう頭の疲れ方はむしろ気持ちがいい。
おっさんと青年の交流話(すごい語弊があるな)。師弟関係に目覚めそうだった。
話の肝は潜入捜査なんだけど、緩急がすごくて、ラストショットまでずっと気を張り詰めて見てしまった。余韻もすごい。青年は終劇後、死んでしまうかもしれないとずっと思っている。韓国エンタテイメントすごい。


出演俳優の舞台挨拶のために見に行った。「名もなき野良犬の輪舞」を見た直後だったので、暴力的世界観が重なって印象が薄れるのはどうしても仕方ない。
物語中に出てくるストーカーめいた女性が素晴らしかった。彼女の言動や思考回路だけでなく、台所に立ちながら片足の指先でもう片方の足首を掻く仕草や、年甲斐のない服装、そこに顕れるだらしなく緩んだ体つき、もう全部が全部完璧に仕上がっていたのが今も頭から離れない。見た目も中身も一部の隙もなくキャラクターを体現していて、俳優ってこういうことかと震えた。


来年の秋の刀の展覧会に向けてゲーム刀剣乱舞を始めて、ミュージカルを追った特集番組を見て、ついでだから映画も、となって行ってきた。漫画の実写化はコスプレになるという批判も多くてどうなることやらと思っていた。でもそれほど違和感はなかった。特撮番組を見ているので多少は目が慣れているというのはある。それを置いても、主人公の三日月宗近は完璧にキャラクターの顕現だった。そういう点では、上記「jam」の女優さんと同じかもしれない。キャラクターによってはウイッグの髪の流れがどうにも不自然なのが気になったりもしたけど、難しいことだね。
歴史の謎を話の主軸に持ってきつつ迫力のある殺陣を交えて時代劇を成立させ、クライマックスでの新戦士の投入、ラスボス戦、という流れるようなバトルものの展開は、こういうのに慣れ親しんでいると見ていて自然と盛り上がる。特にラスボス戦は、攻撃の順番や画面の切り替えの速さ、効果音など、ゲームそのものだった。レンタルになったらまた見よう。


 前半と後半で全然ちがう話が始まったぞおい! と内心ツッコんで見た。同じ題材の映画「ハイドリヒを撃て!」は2016年にやってるのよね。これは原作小説「HHhH プラハ、1942年」があるので、多少は異なるのかもしれないけど。
なんにせよ戦争はいかん。



韓国映画はいくつか気になるのが残っている。「いつか家族に」、「共犯者たち」、「スパイネーション/自白」。うしろ二つはそれぞれ二日間限定上映なので、時間が合うかどうかわからないが挑戦したい。あとはイギリスの荒涼とした風景が見たい「ゴッズ・オウン・カントリー」と5月公開予定「RBG」。その他、オスカー受賞作はレンタルでいいかな。
「RBG」とか先日のポストの「愛と法」とかもそうだけど、この公開で見逃すとおそらく配信はなく円盤化すら…という映画が結構あるものだ。そういうのは見るのにエネルギーもいるので、映画館で見られたら万々歳ではある。

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