5.5.19

あまい、まるい、おおきい、うまい

 苺が好きだ。
 正確には、苺のショートケーキが好きだ。しっとりとしたショートケーキ生地が口の中で解け、そのかけらは滑らかな生クリームが脂肪分のベールで覆われる。ほのかな甘みの中で弾けるような酸味とあとからじわりと広がる瑞々しい甘みが渾然一体となって、しあわせの極致に達する。

 でも、苺のそのものは低価格帯のを買っていると、なかなかおいしいのには当たらない。酸っぱくて顎の関節が痛くなったり、味も薄くて水分補給にしかならなかったりする。
 先日、母がお土産にくれた長さ5センチくらいの大物は、そういう特徴の品種だったのかもしれないが、強い香りの割に味が伴わず、加糖練乳を補って食べた。
 そう、コンデンスミルク+苺の組み合わせは至高である。苺を切るか潰すかしてミルクをかけてしばらく置くと、浸透圧だろうか、苺のエッセンスが溶け出してほどよい甘さに薄まる。それに、乳脂肪分のおかげか、苺の強すぎる香りも少しおさまってくれて食べやすい。大変良い。最高。大好き。

 先日、あまおうを買ったのだ。
 あまおうは福岡が誇るブランドで、その名の由来は甘い、丸い、大きい、うまい。
 丸いは確かに丸い。私の実家周辺のは細くシャープな印象があるだけに、並べると違いが際立った。
 大きい。私の購入したのは小さかったのでその分安価だった。だから買った。
 あまい。私の偏見を大きく覆したのはその糖度だった。あまおうの方が甘いのだ。あまおうの前では練乳など乳脂肪の流動体になってしまう。びっくりした。加糖練乳は糖分58%以下と定められていて、メーカーによってその実は異なるだろう。苺は低糖質であり、糖分の摂取を考慮しなくてはならない場合でも比較的受け入れられる果物だと聞いたこともある。多くの場合で練乳が苺より甘いのだろうと推測していた。

 ゆえに、練乳があまおうに負けるとは予想もしなかった。苺観がひっくり返った。「うまい」果物はそのまま食べて十分にうまい。
 と同時に、ショートケーキにおける苺では、ケーキ部分が甘みを担うこと、油脂が酸味をカバーすることから、ブランド苺が必ずしも適しているとは限らないだろうなと思った。

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