28.4.12

本二冊

久しぶりに小説を読んだ。子の昼寝時間における自分の休憩時間を削って。いやー,おもしろかった。ロバート・パーカーの「初秋」とアガサ・クリスティの「春にして君と離れ」である。こういうのが読みたかった! というのが,読後に抱いた一番大きな感想だ。ストーリーがよくできているとか,そういった話の技巧的なことではなく,単純に自分に何かを考えさせる衝撃を持った本だった。子供のころ,本は好きだったけど,こういうのを感じたくて読んでたんだろうな,なんて思った。

「初秋」は私立探偵の主人公が,不仲の両親同士がお互いを傷つけるために子を争っている中,母親に子を取り返して欲しいと依頼される場面から始まる。実際は両親とも子自身には全く興味がなく,スポイルされている状態。そんな状態から,主人公がその子が少しでも立ち上がれるように手助けするのがストーリーの核だ。

これはいわゆるハードボイルド小説だ。主人公が子に諭す台詞がストレートで胸を打つ。やや主人公がスーパーマンで完全にハッピーエンドの展開だが,要所要所でずばっとくる一言で緩急がつけられる。訳者がすばらしいのだろう。最後の台詞まで到達して,この小説を読み切ってよかったと思わせられた。子は15歳,仮に健全な家庭で育ったとしても,子ども時代から旅立ち始める時期だ。そのときに,主人公のような自分を見てくれる大人の存在は大きいだろう。自分の子には二度読んで欲しいと思う。登場人物の子と同年代,思春期にさしかかったとき,そして,それを過ぎて主人公の立場になったときである。

「春にして,君と離れ」はミステリーの射手アガサ・クリスティには珍しい,一般小説だ。イギリスの地方都市で,それなりに隆盛する弁護士事務所を営む夫,それぞれ結婚して巣立った三人の子を持つ専業主婦の女性が,子の一人を訪ねて一人旅をした帰路に足止めをくらい,図らずも自分の人生を省みることとなった。

時代は第二次世界大戦前夜で,女性は家庭にコックや家政婦,乳母を雇える程度には裕福に暮らしている。慈善活動にも積極的で,社交も欠かさない。家庭も円満だ。けれども,何か一筋の暗い影が思考の端に見え隠れする。自分が見てきた人生と,周りから見えている人生は果たして同一なのか。

結末まで到達すると,人生の積み重ねは容易に覆せないものだと思わざるを得ない。自省するも,自分のものの見方からは抜け出せないし,その外側から見ることもできない。私とは専業主婦であるという共通点があることから,読み進めるのは苦しいものの,読み進まざるを得ない心境になってしまった。生きることの業,なんてことが頭によぎった。



5 コメント:

usao said...

初秋はイイらしいねー。
周りで2人も勧めてくれる人がいるんだから読んでみようかな。

自分が子に呼んでもらいたいと思うもの・・

うーん。

モモ
かなー?

fomalhaut said...

原書でもいけるかなーと思ったけど、ボストンの街並みや野球選手の名前が細かく出てくるところで負けそうだった。あんまり本筋と関係ないんだよね、こういうの。

翻訳でも訳がすばらしく、いい本だったよ。

fomalhaut said...

モモは未読。いつか読みたいと思っているうちにこんな年になってしまった。小学生高学年の頃が一番面白く読めると聞いたので、これ以上感性が衰えないうちに読まなきゃなあ。

usao said...

モモ読んでー!
灰色男たちにやられてる今、私も読み返したほうがいいと思われる。

小学校高学年の頃が一番面白く読めるんだ。まさに丁度その頃に読んだよ!映画も観たけど映画はあんまり覚えてないんだー。

fomalhaut said...

今度借りてくる。

児童書って結構たくさん読んだはずなのに、全然思い出せないなあ。まあどのジャンルも同じように思い出せないんだけどね。