25.1.10

アリゾナ・ニューメキシコ10日間の旅 その3

12/28-1/9のアリゾナ・ニューメキシコ旅行を振り返る。

▼1/3 Sun 教会三昧

今回の旅程で最も北東に位置するタオスプエブロを目指して朝からドライブ。それまでの荒野の中の何にもない一本道から、小さな村を辿る川沿いのぐねぐね道にかわり勢い運転速度も落ちる。2時間ほど進んだところで、脇道にそれてジョージア・オキーフが晩年移り住んだゴーストランチへ立ち寄った。この敷地内で彼女の作品のモチーフとなった風景を見るにはガイドツアーに参加しなくてはならないのだが、冬期はやってないと言われてしまった。歩ける範囲で散策したところ、日本庭園という名のこの地方に伝わる渦巻き模様のラビリンスがあった。ただし、雪の下に……。ラビリンスはあちこちの文化で見られるものだが、ここのは外周にそって回りながら中心点のゴールを目指すもので、歩きながら瞑想するのが目的らしい。とりあえず一週はした。

雪はすべてを覆い尽くす。

さらに東に向かい昼頃にタオスプエブロTaos Puebloへ到着。ここは今も原住民がプエブロに住み自治を認められている村で、世界文化遺産に認定されている。30分ほどのガイドツアーに参加し、村の中心の教会、1800年代にアメリカ勢力に破壊された教会跡地をそのまま墓地にした区域、土釜のオーブンなどを見学。この城壁に囲まれた区域には約40人の定住者がおり、今も電気は通っていないが、プロパンガスは一部家屋で導入しているらしい。また城壁外にも住居を持ち、年に一度のお祭りの際に帰ってくる住民を含めれば300人以上がいるとのこと。土産店が多くあり、彼らの貨幣取得手段となっている様子だった。そのうちのいくつかの店舗では彼らの伝統的な祭礼に使う道具なども見られ、売り手に聞いてみるとその人の家にもあって使っているとのこと。生活の中に伝統的な何かがあるのは、今の自分の暮らしにはないことであり、それと比べて好ましい気持ちになった。


そこから南下しサンタフェに向かいながら、途中で奇跡の砂があるというチマヨ教会に立ち寄った。ここの砂に触れて歩けるようになったという奇跡があったらしく、砂を持ち帰る人も多いとのことで、ちゃんと減った分は足されているとガイドブックに書いてあった。教会の外観は非常にかわいらしい。いつものことだが、教会の見学は非常に気後れするというか、遠慮してしまうために、奇跡の砂の部屋を見つけるのに骨が折れた。だって正面の祭壇のすぐ脇に部屋の入り口があるんだもん。よほど観光地化されていない教会では祭壇近くまでは近寄り難く、いつも座席の後ろから眺めるだけであったのが裏目に出た。

夕方やっとサンタフェに到着。サンタフェと言えば宮沢りえの写真集くらいのイメージしかなく、一方で大きな町だと期待していた。実際は、街は景観を保つために高層建築の規制をしているらしく、高級ホテルや土産物店はプエブロを模しており、独特な雰囲気の街並みであった。かろうじて開いていたロレッタ教会にて奇跡の螺旋階段を見学。釘一本使われず、柱もない螺旋階段として有名らしい。その昔は螺旋階段の手すりすらなく、上り下りは怖かっただろうと想像する。ステンドグラスが美しく、裕福そうな教会だったなぁ。ホテルや土産物屋も併設されていた。

夕飯にガイドブックに載っていた〈Blue Corn Cafe〉にてタコスを食す。この旅で一番おいしいタコスであった。でもハードシェル(アメリカ人考案。リアルタコスのトルティーヤはソフト)だったけど。


▼1/4 Mon 再び自然の中へ

久々に高架の幹線道路に乗って、サンタフェからニューメキシコ州で一番大きな都市アルバカーキを通り越し、ホワイトサンズWhite Sands National Monumentへ。その名の通り真っ白な砂漠が広がるエリアで、その白さから宇宙からも見えるとして第3のスペースシャトル着陸地がある。また、隣は軍施設でときどき射撃訓練をしているとかで、公園への道すがらBorder Patrolの検問を受けた。この辺りから、Border Patrolのパトカーばっかり見かけるようになる。さすがメキシコ近くだ。

この辺りの起こりは、石膏を含む土壌が大部分に渡って隆起した後、ホワイトサンズNMの辺りだけ沈降して盆地のようになったことから始まる。山として残った部分の石膏は雨が降ると溶けて、多くの場合は海に流れ出るものだが、この行き止まり窪地では流れ出る先がない。その結果、盆地内にとどまった石膏を含む雨水の水分が蒸発して、現存する白い土となったらしい。その点、同じ白い砂でも石英を中心とするフロリダ州ペンサコーラとは異なるが、いずれも冬だからか白さによる土壌の冷たさは同じだった。

15時過ぎからトレイルへ踏み出した。初めは転々と生えていた植物も次第になくなり、見渡す限り砂になるのはすぐだった。赤いトレイルポストを辿って歩くのが基本であり、好き勝手に歩いたら遭難しそうである。砂は1年に9m移動するとの通り平坦ではなく、身長の3倍ほどの丘の日陰は早くから霜が降りていた。視界の果てには盆地よろしく山の峰が連なるのが見え、「砂と言えば浜」的な先入観からいつまでも違和感を覚えたものだ。夕焼けを眺めているうちに当然日暮れとなり、薄暗い中遭難せぬようがんばってトレイルヘッドまで戻ったら、レンジャーの車の拡声器が「早く帰れ」と盛んにがなっていた。日暮れは17時頃、18時には閉園のこの公園、17時45分の出来事であった。もう1台車が残っていたが、もし彼らが戻ってこなかったらレンジャーは捜索に行くのだろうか。大変そうだ。

宿がある最寄りの街までの道は実に真っ暗であった。この辺は車のライトをうっかりハイビームにしていると対向車がご丁寧に教えてくれる。何もない所だからこそよりまぶしいのは理解できるが、明かりが全くない地域を下向きのライトで走るのはなかなか心許ない。ボストン近辺だと全然相手のことを気にせずにハイビームにしっぱなしで時に運転に困るのだが、地域差を感じた。

▼1/5 Tue 冒険者たち

アメリカでもかなり南の地域にいるはずなのに、どこまでいっても道路脇に雪が残っている。避寒にかなり期待してこの旅行に来たのに、全然報われていなかった。が、この日のカールスバッド洞窟群国立公園Carlsbad Cavern National Parkに向かいながらだんだん雪が減っていった気がする。

12時過ぎに到着したところ、13時開始のガイドツアーにまだ申し込めるというので参加することに。この洞穴は基本的には歩道が敷いてあり自由に見学することができるが、未舗装のエリアにヘッドライト付きのヘルメットを被って探検するガイドツアーもある。申し込んだのはそういう類のLower Cave Tourだ。

参加者は定員ぎりぎりの12名であり、ツアーの初めに入り口は秘密にしてくれとレンジャーから再三注意を受けてから開始。歩道の脇の進入禁止ドアを開けて、窪地の斜面を綱を伝いながら下り、秘密の入り口の先にある鉄製の梯子を下ったところから地下洞窟が始まった。途中、レンジャーからこの洞窟の成り立ちや鍾乳石の解説を受けながら歩いた。一般に公開していないだけあってそれほど見所があるわけではなかったが、照明などが施されていない、素のままの洞窟を歩くのはなかなかに冒険的で興奮した。途中で狭い通路を四つんばいに這って進んだりもしたなぁ。


ツアー後、閉園まで1時間ほどあったため引き続き自由散策部分を歩いてみた。さすが一般公開部分だけあって、広い空間にこれでもか、これでもかと大きな鍾乳石があった。圧巻。

ここの洞窟は、かつて海の底だったためにできた石灰質の層を含めた土壌が隆起したのが始まり。その後、二酸化炭素を含む雨水によって浸食されたのと、下層にある石油層から発生する硫化水素による浸食とが相俟って、広大な空間ができたらしい。炭酸ガス、硫化水素両方の影響があるのは珍しい例という。アメリカにはこのほか、ケンタッキー州にマンモスという名の広大な洞窟があるが、そちらは二酸化炭素だけによってできたらしい。そんな話がとても興味深く聞こえ、もし子供の頃にこんな洞窟を知っていたら、今頃私は違う職業に就いていたかもしれないなぁと思いを馳せた。
 

▼1/6 Wed Go rush!

再度カールスバッドNPへ訪れ、午前のガイドツアーに参加することにした。朝9時半に到着したら、昨日参加したツアーはすでに満席となっていた。昨日は運が良かった。思い返せばこの旅では誰かの運の良さに助けられた場面がしばしばあった。最たるものは1/1のアンテロープ、モニュメントバレーで、アンテロープにあと10分遅れて到着していたら、あの日はモニュメントバレーまで到達できなかった。そしてそのしわ寄せはおそらくこのカールスバッドに起こり、昨日のツアーには参加できなかっただろうと思う。

午前のツアーは、昔は一般公開されていたが今は限定公開になっている場所で、歩道が敷かれていた。王の間という名の通り、広い空間に細かい鍾乳石が天井一杯に広がる様には圧倒された。その昔、まだ国立公園になる前には、ここで結婚式が行われたり、避暑に使われたりしたらしい。このツアーは80人が参加できる大規模なもので、レンジャーが初々しい感じだった。その後、一般公開部分を再度散策して、昼食後にここを出発。



カールスバッドはこの旅で最も東にあったため、ここからはひたすら西に向かって走る。途中、メキシコと国境を接するエルパソに立ち寄り、夕焼けを見ながら国境の向こうに思いを馳せたり、写真を撮りまくったりした。夜景も幹線道路の車の明かりもきれいであったが、国境がどこなのかは夕暮れ過ぎてよくわからず。ちょっといい気分で隣町まで移動したら、また検問。お仕事ご苦労様です!

2 コメント:

Anonymous said...

はじめまして。
今月カールスバッド洞穴郡国立公園に
行く予定のものです。
マイナーな公園だけあり なかなか情報収集に困っている中 このブログを見つけました。私たちもLOWER CAVEに申し込みをしているのですが、このツアーについて教えて頂けますか? 公園HPだと結構ハードだと記載されているのですが、荷物はバックパックしょっていても大丈夫ですか?あとカメラも持っていて問題ないでしょうか?ニーパッドもあるとよいと書かれているのですが、必要でしょうか? どうぞよろしくお願い致します。FROM:KATE ONO

fomalhaut said...

お返事が遅くなりまして申し訳ありません。

まず、どれくらいハードかといえば、それほどでもありません。Lower Caveへ一旦下りてしまえば、基本的には平坦な所を歩くだけです。

ただし、以下の4カ所が少々大変でした。
・綱をつたって岩を上り下りする(4歩くらい)
・梯子の上り下り。身長より長いもの含み、角度を変えて3回
・岩が壁に迫る隙間を体を横にして進む。岩に触れてはいけない
・這って進む(5mくらい)

以上は荷物を背負った状態では少々厳しいものを感じます。バックパックはおそらく集合場所へ置いていくようレンジャーに勧められると思います。

集合場所は暗く、ツアー参加者以外は入れない囲いの中であり、隅の方に荷物を置けば外からは見えないと思います。しかし、常に人がいる場所ではないので、防犯上、精神的にも背負う荷物は持ち込まない方が良いかも知れません。なお、他の参加者はおおむねコンパクトデジカメ一つでの参加だったと記憶しています。

ヘルメットのライトのための乾電池は持ち込みましたが、ヘルメット自体とニーパッドは借りられました。膝をつくのは前述の這う場所だけですが、あれば安心でしょうし、なくてもそれほど困りません。

カメラの持ち込み、フラッシュの使用は可能です。しかし、三脚は難しいと思います。cave内は人が踏み込めるのは人一人通れる幅しかありません。また壁や天井には触れないようにとレンジャーに言われます。

ヘルメットのために頭が蒸れるので、バンダナなどを利用されるといいかもしれません。

ひょっとしたら既に旅行された後かもしれませんが、お役に立てれば幸いです。